Readin'

Readin'

仕事のこと、ビジネスに役立つこと、海外事情

日本の人手不足と地方中小企業が取るべき採用戦略

f:id:Gincole:20170425151920j:plain

 人材が不足しているニュースが様々な業界で話題となっている。昨年末の女性電通社員の過労死の大きな原因の一つに、慢性的な人手不足から一人当たりの仕事量が限界を超えていたという指摘がある。最近ではヤマト運輸がドライバー不足などを理由にネットショップの即日配達を辞める決断に至った。また大々的にニュースになることはないが、地方の中小企業でも人手不足は大きな問題になっている。

 さらに地方では人材の高齢化がより進んでおり、人手不足と相まって企業の力が一層衰退していく構造になってしまっている。地方中小企業を経営していく立場にある僕も他人ごとではない。

 

生産年齢人口はバブル期から20年で1,000万人減った

 下のグラフを見てほしい。このグラフは1950年から2060年にかけての日本の人口の推移を表している。15歳から64歳までの働く年齢層である「生産年齢人口」は2015年時点で7,728万人。ピーク時の1995年の8,726万人と比べると約1,000万人、10%以上減った。また、移民政策を打たない限りは、この「働く人口」は今後も減っていくことが確実だ。

     f:id:Gincole:20170425152713j:plain

                                  生産年齢人口推移(出典:BizHint HR)

 この減り続ける働き手をめぐって、大企業・中小企業が入り混じっての人材確保競争は、一層激しさを増していくだろう。もともと大企業と比べると、採用活動では不利な立場にある中小企業、その中小企業が今後どのような採用活動を行っていくべきかを考えてみる。

 

大胆で他とは異なる「採用活動」

 採用活動というのもある種、他企業との競争である。企業の採用募集数が就活生の応募数を上回る「売り手市場」な上、優秀でやる気のある就活生となれば、どんな職種のどんな企業であっても採用したいと考えている。そうした人材確保の競争でも、企業の通常の営業活動やマーケティングと同じで他企業との「差別化」が有効な手段となってくる。

 多くの採用活動をする企業はまず一般的に、就職活動サイトへの募集登録や会社説明会を行う。そして面接や試験等を経て採用する人を決める。地方中小企業がこれと同じことを行っていても、何千、何百社ある企業の募集の中で目立つことはできない。そうした状況では、普通ではない大胆な採用方法を取ることで「差別化」し、就活生からの注目を集める必要がある。

f:id:Gincole:20170425154249j:plain

採用活動の「差別化」 大胆に攻める

 一つの例が、ある地方の中小企業が行っていた大胆な採用方法だ。この企業は地方に位置しており、例年は地元の大学や就活生のみをターゲットに採用活動をしていた。しかし少子化や過疎化で、その地方にいる学生の数が減少していることもあり、満足いく募集を得られていなかった。

 そこでまず募集する生徒を地元に限定せず、日本全国から募集をするようにした。また採用活動の際に、全国各地からその企業のある地方までの交通費、宿泊費までを全額支払うことで、就活生が遠方から参加するハードルを下げている。実際の採用活動は1泊2日に渡って行い、夜は企業の社員と就活生全員参加の飲み会が開かれる。採用を担当する社員からすれば、面接時には見えなかった素の人柄を見ることができ、就活生からは社員や企業の雰囲気を体感できる。また一社会人として就活生にアドバイスを与えたり、ざっくばらんに質問を受け付けているそうだ。

 実際この企業には数人の募集に対して、200人を超える応募があるとのこと。他の企業がやっていない大胆で極端な採用活動をすることで、「差別化」が成功している例だ。このように、他の企業が行っていないユニークな採用活動を実施することで、人材確保競争でも自社を差別化し有利に進めることができる。

 

仕事の内容をクリアに説明する

f:id:Gincole:20170425155120j:plain

 中小企業の採用活動で重要なことは、その企業に入社した時に、具体的にどういった仕事をすることになるのかをクリアに説明できるかどうかだ。採用してから新入社員の配属先を決める大企業の「ポテンシャル採用」と違って、中小企業は「営業の○○社担当」や「製造の○○ライン担当」など、採用したい「場」が決まっている場合が多い。採用活動中に就活生に対して、入社後に働く内容をしっかり説明できれば、就活生はその企業で働く具体的なイメージを持つことができる。

大企業の入社前とイメージと実際の仕事内容のギャップ

 大企業での採用活動は、会社の全体的な活動内容を説明することはできるが、入社した後に実際にどういった仕事をするのかは配属次第となる。希望の配属先が異なれば、入社前に思い描いていた働くイメージとのギャップが生まれ、それが早期退職のリスクとなる。

 たとえば、ある大手メーカーで○○という製品開発に携わりたいと望んで就職活動し入社したとしよう。しかし実際には入社後に総務部に配属され、入社前には全くイメージしていなかった働き方をすることとなる。こうしたケースでは、「本当にこんなことがしたかったのかな」という疑念が生まれ、就活中の働くイメージと実際の仕事内容にギャップが生まれてしまうのだ。

 与えたい仕事内容が既に決まっている中小企業は、なるべく具体的に仕事内容を就活生に説明することができる。このクリアな説明が入社後に働き始めてからのギャップを無くし、離職のリスク回避となるため非常に重要だ。

 

社長自らが積極的に就活生と関わる。若手社員を採用活動に関わらせる。

f:id:Gincole:20170425155702j:plain

 自分や周りの企業の経験上、中小企業に入社した新入社員が入社を決めた大きな理由の一つに、「社長についていきたい」と感じたこと「社長自らに熱心に誘ってもらった」という点がある。またそのように語る新入社員が多いことを実感している。採用活動中に会社の魅力やビジョン、仕事内容に対する熱意は、社長が一番語れるはずだし、結果就活生にも良く伝っているようだ。

しかし現実的には社長は最終的な面接のみに参加し、基本的には総務の人間に採用活動を任せる社長も多い。社長も他の仕事が忙しいためなかなか採用活動に時間を割けないでいる。

 しかし中小企業だからこそ、トップである社長と社員や就活生との距離が短く、直接話ができるという強みがある。社長との話から中小企業への入社を決める就活生が多いからこそ、是非社長自らが時間を割いて積極的に採用活動に関わるべきだろう。

若手社員をどんどん採用活動に関わらせる

 また社長と同じく、入社後数経った若手社員も積極的に採用活動に関わらせるべきだ。就活生は若手社員とのざっくばらんな会話を通して会社や仕事内容を理解し、入社後数年たった後の自分の姿をイメージすることができる。また就活生と年の離れた中堅・ベテラン社員が行くよりも、若手社員が行く方が親近感を持ちやすい。

 若手社員を採用活動に関わらせる際は、若手社員の中でも活きの良い社員を活用するべきだ。明るく話す若手社員は良い企業の雰囲気を与えることができる。無理に平等に、若手社員全員を採用活動に関わらせるのではなく、少数精鋭の若手代表社員に採用活動に参加してもらう。

 会社の魅力、仕事の熱意などの面は企業のトップである社長、そして企業の雰囲気や親近感を若手社員が伝えることで、中小企業は採用活動を進めていくべきだろう。

 

ウェブサイトに就職活動専用ページを設ける

f:id:Gincole:20170425155219j:plain

 採用活動をしようとしている企業であれば、自社のウェブサイトでその告知をする必要がある。就職活動をしている学生たちは既にネットネイティブ世代と呼ばれ、インターネットが常に近くに存在してきた世代だ。わからないことはすぐにネットで調べ、またネットを利用した情報収集能力が高い。

 したがって、自分が受けようとしている企業の情報がネットに乗っていなかったりすれば、就活生に対して不信感を与えてしまう。大企業であれば、自社のウェブサイトを整備している企業がほとんどだろう。しかし特に中小企業の経営者の中には、いまだにネットでの情報発信の重要性を理解していない人が意外にも多い。もしくは、重要なことは分かっているが、ウェブサイトの設立や更新するための時間とお金のリソースをなかなか割けないでいる企業も多い。

 特に採用活動に関しては、相手がネットネイティブな20代だ。少なくとも自社のウェブサイトで企業の最低限の情報や、仕事内容などは掲載しておくべきだろう。

 

中小企業である強みを生かした採用活動をするべき

f:id:Gincole:20170425155326j:plain

 大企業と比べるとどうしても給料面や福利厚生面では劣ってしまう中小企業。したがって採用活動ではこうした給料・福利厚生の面にスポットを当てるのは得策ではない。むしろ中小企業だからこそ持ち得る、就職活動生に響くポイントを全面的にアピールするべきだ。例えば、若手のうちから責任のある仕事にチャレンジでき、成長できる環境があるなどの「働きがい」や、残業なしや長時間労働を推奨しない「ライフワークバランス重視」などの面を強調する。

 大企業であれば従業員数も多く年功序列なので、自分の裁量で責任感の大きい仕事ができるまで何年もかかるケースが多い。しかし中小企業の場合は、少人数で一人一人の役割が重要な為、おのずと仕事は責任の大きいものになる。そうした仕事をこなしていくことで社会人としての成長も見込めるのだ。また地方の中小企業には残業の無い企業や、長時間労働の無い企業が多い。

 実はこうした採用活動での中小企業の強みとも言えるポイントは、現在の就職活動生の企業を選ぶ基準に沿ってきている。昨今の長時間労働や過労死がクローズアップされることで、就活生の中でも企業を選ぶ基準として、残業や有休に関する「ライフワークバランス」を重視する就活生が増えてきていることも事実だ。また「成長」や「やりがい」に焦点を当てて就職活動をする就活生は、働くこと、成長することへの意識が高く、優秀な就活生である可能性が高い。

 こうした世間の流れと中小企業の強みを活かしたアピールをすることを採用活動ではこころがけたい。

 

まとめ

  • 日本全体の人口推移では、労働力である「生産年齢人口」がピーク時から2015年までに10%減少。さらに今後減少を続ける。
  • 人材確保競争に拍車がかかるうえ、採用活動においてもともと不利な立場の地方中小企業はさらに厳しい人材確保競争に見舞われる。

その為に地方中小企業は以下のような採用活動戦略を練るべきだ。

  • 他社と差別化された大胆な採用活動を考えるべき。
  • 採用活動では割り当てられる仕事の内容を具体的に説明し、働くイメージを持たせる。
  • 経営者と若手社員が積極的に採用活動に携わるべき。
  • ウェブでの情報発信力を整える。まだまだ未整備の中小企業が多い。
  • 「働きがい」「成長」「ライフワークバランス」など、採用活動における中小企業の強みに焦点を当ててアピールするべき。それは就活生全体の流れに沿ってもいる。